第1章

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「ママ! ママ! ママ!」 「美奈! 美奈! 美奈!」 「あたしね、ママが迎えに来てくれるのを、あそこでずぅ――と待っていたんだよ」 「ごめんね、ごめんね、迎えに行かなくてごめんね」 「ママに会えて良かったぁ――。 でも…………あたし…………死んじゃったんだよね、トラックにひかれて…………。 だから…………もう…………行かなくちゃ。 あのね、お爺ちゃんとね、お婆ちゃんがね、そこまで迎えに来てくれているの。 バイバイ、ママ、大好きだよ…………」 母親にお別れの言葉を言う幼女の身体は、だんだん透けて行き消えて行く。 「美奈ぁ――――!」 幼女の身体が消えて行くのを見ながら、私は思い出した。 私が記憶を取り戻した事に気が付いた、女子高生が話しかけて来る。 「思い出しましたか?」 「はい。 朝、混雑するホームで電車を待っている時に後ろから押され、ホームの下に転落して電車にひかれた事…………、それに…………父や母、兄弟の事、働いていた会社、住んでいた住所、電話番号、全て思い出しました」 「ご家族をお呼びしますか?」 「否。 私が死んでから、どれ程の月日が経っているか分かりません。 父や母、兄弟達には私から会いに行きます。 それから美奈ちゃんのように、私も旅立つとしましょう。 長いあいだお世話になりました。 ありがとうございます。 失礼致します」 私は2人の姉妹に何度も頭を下げ、この事務所を後にした。
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