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四月。始まりの月。花の高校生二年目の初めから彼女は登校を拒否した。
北条紀伊。
同年代の少女たちと比べると、とてもとても『小さい』女の子である。小学生に間違えられた時は自分のことながら信じられなかったくらいだが……いくらなんでも140未満では勘違いされても仕方ないかもしれない。
扇状に広がる銀がキラリと光る。ベッドに横になる北条の腰まで伸びた銀髪である。両親が外国人というわけではないのだが、なぜか彼女は美しい銀髪を靡かせていた。先祖の中に銀髪を持つ人がいたのだろうか。
「蓮、怒っているだろうなぁ……」
ボソリ、と呟く北条だったが、その先には繋げられない。怒られるのは嫌だけど、外に出るのはもっと嫌だった。
部屋の隅には雑誌の山を崩すように制服が脱ぎ捨てられていた。着替えようとはしたが、耐えられず投げ捨てたのだ。
そして。
そうして。
ゴッパァンッッッ!!!! と。
扉をぶち壊し、踏み込む男が一人。
「わひゃあっ!?」
「よお、不登校児。始業式サボるたあ中々イカしているじゃねーか」
「蓮!?」
立花蓮。
北条の隣に住む幼馴染みの少年は面倒そうに黒髪を掻きながら、
「小動物系女教師雫ちゃんが幼馴染みってだけの俺に様子見てくるよう頼み込んできてな。放課後、わざわざ、出向いてやったんだ。お茶の一つもねーのか?」
「相変わらず無茶苦茶な男なんだから! っていうか、ドアが吹き飛んだんだけど!? 完全に壊れているっていうか、真ん中から割れているじゃんっ」
「そんなのどうでもいいだろーが」
扉の残骸を脇に蹴り捨て、人体の構造を軽く無視した膂力を振るう幼馴染みはずかずかと遠慮なく歩み寄る。最初の衝撃に驚いてベッドから跳ね起きた北条紀伊の顔面を右手で掴み、力を込める。
アイアンクロー。
ギヂギヂギチと嫌な音が響く。
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