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あれから長い……長い年月が過ぎた。
今でもボクは、いつまでも衰える事の無いご主人さまのワガママとイタズラに振り回される毎日を送っている。
「……よーし、焼けたぁ! 隠し味にジンジャーの入った、オレンジチョコクッキー。あはは、いい匂いー。あとはダージリン……っと」
温めておいたポットで紅茶を淹れ、クッキーを添えてトレイの上に。
時計を見ればちょうど三時。なんとか間に合ったみたい。
「ご主人さま、おやつでちー。ご希望のオレンジピールをきかせた焼きたてのチョコクッキーとダージリン……」
トレイを掲げてテクテクとリビングに入っていくと、ご主人さまがゆったりとソファに背中を預けていた。
「紅茶はストレートでいいでちか。あ、でもクッキーは甘さを控えたから、飲み物にはお砂糖入れても……」
呼びかけても返答は無し。
ボクはテーブルにトレイを置き、ふわふわと浮き上がってソファに近づいた。
「……ご主人さま、おやつ出来まちたってばー。寝てるんでちかー?」
ドクロのマスクは当たり前のように表情を変えない。いつもと同じ、闇よりも暗い眼窩がボクを無言で見つめ返す。
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