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ボクのご主人さまは、とってもわがままだ。
「シルキー! どこだシルキー!!」
「ハイでちーー!」
ジンジャークッキーのたねを天板に絞り出していたボクは、すべての作業を中断してリビングに向かった。モタモタしてるとすぐ怒るから。
「お呼びでちか、ご主人さま」
ボクはエプロンで手をフキフキしながら、マグノリアのルームライトがぼんやりと照らすソファに駆け寄る。
この屋敷の窓は少ない上にドロドロに汚れているので、昼間でも薄暗いのだ。
「うむ。ジンジャークッキーはまだ焼きあがらないのか」
ソファにふんぞり返り、ご主人さまがドクロの顔でボクを流し見た。
と言っても、これはドクロのマスク。なんでこんな物を被っているのか、意味不明すぎてボクにはよくわからない。
「今、オーブンに入れるトコだったんでち。んもぅー、早く食べたいなら邪魔しないでくだたい」
「そうか。実は、今日のお茶の時間はオレンジピールをきかせたチョコクッキーが食べたくなったのだ。どうだ、この提案」
ご主人さまが優雅な手つきで両手を広げる。
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