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英国紳士であることを重んじる彼は、屋敷に居てもキチンと糊のきいた白いシャツに袖を通し、スカーフのようなアスコットタイは欠かさない。
お洒落で洗練された……暴君なのだ。
「どうだ……とは? えーと、今日はジンジャークッキーと渋めのアールグレイといこうじゃないかってご主人さまが。それにもう焼くだけ……」
「それは過去の話だろう。今の私はオレンジが香るビターなチョコクッキーとダージリンの気分なのだ。そういうわけで変更しなさい」
「イヤでち! ご主人さまこそ、その気分を変更してくだたい。元に戻して!」
「なに、召使いの分際で主人の要望に応えられないと言うのか。……フッ、未熟者め……」
鼻にかけた笑い方がものすごーく腹立たしい。
でもボクは召使い、ご主人さまの命令は絶対なのだ。と言うより、希望が通らないと次にどんな無茶を言い出すかわからないから、かえって面倒くさい。
「……わかりました。ではおやつの時間は三時半頃に……」
「おおシルキー、おやつは三時に決まっているだろう? 私の楽しみを30分も先延ばしにするつもりか」
「…………」
「紳士たるもの、時間通りに行動してこそ心に余裕が出来るもの。シルキーも覚えておくといい」
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