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こんなご主人さまと、ボクはこの幽霊屋敷と囁かれるボロボロの城で二人暮らし。
以前は食料品を定期的に届けてくれる行商があったけれど、今ではそれすらもなくなった。
でも寂しいなんて思う暇がないくらい、ボクは変わり者のご主人さまのお相手で毎日奔走している。
「……んもぅ、How willful you are!(ワガママなんだから!)」
「ご主人さまに向かってワガママとはなんだ。コラ待ちなさいシルキー、シルキー!」
騒ぐ声をリビングに残して、ボクはキッチンに駆け戻った。いつまでも相手をしていたら三時までには到底間に合わない。
(よぉし、このジンジャークッキーのたねの中にチョコレートとオレンジピールを混ぜちゃえ。ビックリするかな……クスクス)
それでもボクはこの暮らしを気に入ってる。最初はあんまり口もきいてくれなかったご主人さまだけど、今ではあの通りだから。
寂しいって気持ちがどんなモノだったか、今のボクにはもう思い出せない……。
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