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【週一回の通いの召使いとはいえ、もう貴方さまのワガママには耐えられません。これきりお暇をいただきます。永遠に!】
……読んじゃった。
「ああ……、13人目も一カ月もたなかった。なぜだ……! もう斡旋所も相手にしてくれまい……」
絶望にも似た声を漏らした彼の目に、ハッといきなり光が宿る。
「……君、家事はできるか。料理、洗濯、掃除……は私の部屋と、この居間だけでいいのだが」
「できるけど……そんなにワガママなの? やっぱりボク、お金もらって街に……」
「黙りなさい。金に手を付けた瞬間、君を窃盗犯としてこの場で銃殺するぞ」
「ええっ!? ホントだ、すっごいワガママ!」
「ご主人さまに向かってなんだね、その口の利き方は。キチンと敬語を使いたまえ、シルキー」
――そんな感じで始まったここでの生活。
確かにワガママな人だし、大人なのに子供みたいなイタズラもよくしてくる。
小麦粉の中にオモチャの蜘蛛を入れておいたり、せっかくきれいに洗って干した洗濯物に霧吹きをして、いつまでも乾かないと首を傾げるボクを陰で笑って見ていたり。
そして次の日に着るシャツが無いと言って喚き散らすのだ。
後先考えないでその時したい事をする、徹底したゴーイングマイウェイな性質。
ところがその性質が、ある日ボクにとってもご主人さまにとっても、取り返しのつかない事件を引き起こすことになる――。
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