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その日もボクは、いつも通り裏庭で育てているハーブを取りに外に出た。
ご主人さまはかなりのグルメで、こういった香辛料は欠かせない。
でも月一回食料を配達してくれる行商人はハーブまで持ち合わせていない事が多いので、仕方なく自給自足している。
(ハーブのきいた具だくさんスープなら食べられるかなぁ)
ご主人さまは昨夜から原因不明の熱を出し、うんうん唸っている。昨日の昼間までは元気だったのに、わけがわからない。
庭に出て、昨夜の雨でずいぶん地面がぬかるんで柔らかくなっているな……と思っていた矢先。
ボクは花壇の前に作ってあった大きな落し穴に……、見事にハマった。
ズボッと、ドスンと、ゴキッと。
(…………ゴキッと……?)
薄れゆく意識の中で、ボクは自分の首があり得ない角度で折れていることを知った。
打ち所も落ち方も、運も悪い。まさか落し穴なんかで、人ってこんなに簡単に死んじゃうものなの?
(イタズラが大掛かりすぎだよ……。そう言えば昨夜、こそこそと濡れたガウンを着替えているご主人さまを見かけたっけ……)
あの雨の中を馬鹿みたいに一生懸命こんなものを作っていたのかと、怒るよりも笑ってしまう。そりゃ風邪もひくよ……。
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