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「シルキー……! どこだシルキー……」
屋敷の方からご主人様の、いつもよりちょっと力の無い声が聞こえる。
きっと熱のせいで喉が渇いて、ハチミツレモン水を持ってきてくれ……ってなとこだろう。
その声を聞きながら、ボクは……短かった人生に静かに目を閉じた。
二時間後――、
やっと思い出したのか、ご主人さまは自分の作った落し穴にやってきて、その中でおかしな形で死んでいるボクを見つけた。
「…………ハマり方が見事すぎる……」
また降りだした雨の中、ご主人さまは無表情で穴の中のボクを見つめ続ける。
ボクは死んでるから当然何も言えないのだけど……人って死んでも、こうやって意識というか気持ちってすぐには消えないんだってことを初めて知った。
やがてご主人さまは、納屋からスコップを持ってきてボクを静かに埋め始めた。
驚いたのは、先にちゃんと穴の中に入ってボクの体をまっすぐに整え、両手をキチンと組み合わせてくれたこと。
それだけでも、ボクは幸せなんじゃないかなって思える。
だって短い間だったけど、こうして冥福を祈ってくれる人と一緒に暮らせたんだから……。
ね? ご主人さま…………。
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