2* 転入生

21/22
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
走はこの小さな子供みたいな少年に、脆(もろ)さを感じて、少し胸が締め付けられた。 「じゃ、さ。 こういうのは、どう? オレが君の面倒を見る代わりに、 いつか、オレが君のこと、論文に書いてもいい?」 「・・・論文?」 「うん。 オレはいつか学者になって、君が、本当に、この世界にこうやって生きていたんだって、書き残したいんだ。 発表はいつだっていい。 オレが死んでからだって構わない。 君がいつか安全で安心に暮らしていけるようになってから。 そんなことあったんだって、思い出話になってから。 君が年老いて家族にそんなこと話せるようになってから。 ・・・それならどう?」 ぴょんタは顔を上げて走をじっと見詰めた。 「・・・いいよ。」 走は、透き通った眼鏡のレンズの奥からぴょんタを見詰め返す。 「そんな風に君を観てもいい?」 「・・・いいよ。観て。 僕のこと観てて。」 堪らないように、そう言って、ぴょんタは走に抱き付いた。 ぎゅっと絡みついているのに、尚、走の存在を確かめようとする腕。 そんな所在の無いぴょんタが危うくて、走はその背中に黙って腕をまわした。 .
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!