4* 体育と音楽

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「なんだこれは?」 ぴょんタの机の上にあった書きかけのポストカードを見て、走が言った。 「理事長先生が、靜さんに手紙を書いたら喜ぶよって・・・。」 「にしても、・・・この文章力。」 そうなのだ。 子供っていうのは、ぺらぺら達者に喋るくせに、手紙を書かせると途端に下手な文章になる。文字が書けたからって手紙が上手くかけるもんじゃない。文章を書く力は別の能力なのだ。 そして、文字を習い始めたぴょんタも文章力は小学1年生並みだった。見ると、その側に人物?のつたないの絵が添えてある。 「これ、君?」 「うんっ。」 「わざわざ描いちゃった?」 「うんっ。あとね、走くんとピーツィを描くんだよ。」 「あそ。」 それウサギにしか見えないとか、いちいち文句を言うのは趣味じゃない。気の済むまでやればいい。走はそのポストカードを見ながら、ぴょんタのアタマの中身を垣間見る気がした。 正真正銘、こども。 転入して来て2週間、ぴょんタは特別クラスで、どうも小学校低学年並みの勉強をしているようだった。寮室の机の上には、ひらがなやカタカナを練習した かきかたノート、簡単な漢字のドリル。それから、算数や理科、社会など各教科のドリルが積み上げてあった。 本当は、各教科の先生方が個別授業をするはずだったのだが、ぴょんタの人見知りがひどく、――特に男性教師への警戒心が強かった。この学校の職員は9割以上が男性なのに!―― やむをえず、深森先生が大方の授業を教えていらっしゃるとのことだった。 そして、時々、九王城理事長先生に呼ばれ、ちょっとしたお茶会をしているらしい。九王城先生はぴょんタを喜ばせるために、少しお菓子なども用意して下さっていて、『最近、どう? 困ったことない?』と、気遣って声をかけて下さっているとのことだ。 甥の靜さんがぴょんタの後継人になったということは、理事長先生にとっても特別な人物なのだろう。身内のように接して下さっていた。 きっと、件のポストカードは、このお茶会の時に理事長先生に提案されたものと思われた。 .
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