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「ん! うまい!」
千尋は驚いたように、ポカンとしてから。
数秒後、恥ずかしそうに俯いて笑った。
「おじやって、こんなに美味しかったんだな」
「はい。みんな鍋の後にする、オマケの料理と思ってるようですが。こんなに手軽で美味しくて、栄養バランスの取れた料理は、他にありません」
千尋は論戦を挑まれた政治家みたいに、口をへの字にして、断言した。
圭助はモグモグと咀嚼し、嚥下してから訊いた。
「それで専門店を始めたの?」
「はい。みなさんに、おじやの素晴らしさを、少しでも伝えたいんです」
「ス、スゴイ情熱だね」
すると千尋は、少し困ったような顔をしてから、言った。
「私の父は、居酒屋と焼肉店を経営してたのですが。暴飲暴食と喫煙が祟って、若くして亡くなりました。脳梗塞でした。それから母はキャバクラで働くようになったのですが、飲み過ぎで肝硬変になり、やはり亡くなりました」
「……大変だったね」
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