3.想ひ出

4/11
前へ
/30ページ
次へ
 涛吉家の食事は、母親が事故で亡くなってから、基本買ってきた惣菜だ。  同じ商店街にある惣菜店や、肉屋で買ってきたオカズである。  この日は、これも商店街の中にある中華料理屋の、テイクアウトした餃子と春巻き。それと惣菜店で買ってきた野菜炒めと、おからの和え物だ。ご飯は炊飯器で炊いて、味噌汁はインスタントである。  テレビをBGM代わりに点けて、父と息子、無言で食事を頬張る。 「親父、この店はいつまで続けるんだ?」 「とりあえず、体が動くうちはやるつもりだ」 「この店って赤字だろ?」 「そうだな」 「なのに、なんで続けるんだ? 貯金はあるんだから、引退して温泉に行ったり旅行に行ったりして、楽しめばいいんじゃねえか?」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加