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「一つは、他にやりたいことが、特にねえからだな。俺は温泉、あんまり好きじゃねえし。旅行もあんまり好きじゃねえ。面倒だし、蒲団や枕が変わると、気持ちが悪くて眠れねえんだ。そもそも出不精だしよ。かといって食道楽でもねえし。酒もタバコもやらねえし、ギャンブルにもまったく興味ねえ。パチンコやマージャンも嫌えだし、ゴルフや釣りにも興味ねえ。音楽や映画も、嫌いじゃねえがそんなに好きでもねえし。車やバイクも嫌えだしよ。たまに本を読むくれえだ。強いて言やあ、この花屋が趣味だな」
「それで、花屋を始めたのか?」
「…………始めた理由は、他にある」
「どんな?」
すると、雅文は茶で喉を潤してから。
窓の外に目をやり、話しだした。
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