1.ある日のこと

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 おじやです。とその女性は言った。  え? と青年は聞き返す。 「え、なにの専門店?」 「おじやです。おじや専門店です」  二十代半ばくらいの女性は、やけにキッパリと答えた。  青年、涛吉圭助は、しばしポカンとしてから聞き返す。 「おじやって、あの鍋のあとにするヤツ?」 「べつに鍋のあととは限りません。ご飯と具を、多めの出汁で煮込んだ料理です」 「ああ~~と、要するに、雑炊のことだよね?」 「いえ。おじやです」  とその女性、弐輪千尋は、少し怒ったように言った。  圭助はやや狼狽えて、瞬く。
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