3.想ひ出

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 母さんが出演する日程を調べて、母さん宛に花を送る。  それを繰り返した。欠かさずにな。  元クラスメートの涛吉雅文より、と添えてな。  お礼の手紙も電話も、まったく無かったが。  俺は気にしなかった。下心はなく、本当にただ応援したかったのさ。  けど、母さんは主役にはなれなかった。  数年で退団して、他の芸能事務所に所属して、女優を目指してた。  それでも俺は花を送り続けた。  母さんが営業で地方の巡業に行った時も、ドラマや映画に脇役で出た時も。  ファンクラブに入って、スケジュールを事務所に問い合わせて、必ず花束を送った。  けど花束ってのは高い。けっこうな値段がする。  親に頼るのはおかしいし、生活費を切り詰めるにも限界がある。  そこで思いついたのが、花屋への転職だ。  自分が花屋になっちまえば、好きなだけ安く花束を送れる。  俺はサラリーマンを辞めて、生花店を開くことにした。
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