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母さんが出演する日程を調べて、母さん宛に花を送る。
それを繰り返した。欠かさずにな。
元クラスメートの涛吉雅文より、と添えてな。
お礼の手紙も電話も、まったく無かったが。
俺は気にしなかった。下心はなく、本当にただ応援したかったのさ。
けど、母さんは主役にはなれなかった。
数年で退団して、他の芸能事務所に所属して、女優を目指してた。
それでも俺は花を送り続けた。
母さんが営業で地方の巡業に行った時も、ドラマや映画に脇役で出た時も。
ファンクラブに入って、スケジュールを事務所に問い合わせて、必ず花束を送った。
けど花束ってのは高い。けっこうな値段がする。
親に頼るのはおかしいし、生活費を切り詰めるにも限界がある。
そこで思いついたのが、花屋への転職だ。
自分が花屋になっちまえば、好きなだけ安く花束を送れる。
俺はサラリーマンを辞めて、生花店を開くことにした。
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