3.想ひ出

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 その一年後、だったかな。  いつものように店を開けて、開店準備をしていたら。  ふいに「涛吉君」と名前を呼ばれた。  母さん、京香が、そこに立ってたんだ。 「いつも花束、ありがとう。なんのお礼も言わないで、ごめんなさい」 「…………いいんだ。俺が勝手に、好きでやってたことだから」 「怖かったの」 「え?」 「涛吉君が、本気だって分かってたから。返事をしたら、お付き合いが始まると思って」 「……そっか」 「応援してくれて、感謝してる。でも芸能界は、もう引退したの」 「えっ!」 「美人なんて、全国に何人でもいるのよ。演技の上手い女も、たくさんいるわ。それだけじゃダメなの。スターになる人って、みんなちょっと頭がおかしいのよ。異常なくらい非常識だったり、傍若無人だったり。その狂気が人を引きつけるの」 「………………」
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