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千尋は驚いたように口をすぼめてから、はにかんだように、微笑んだ。
「素敵な話ですね」
「そお? 俺はちょっと複雑だけど。母さんは、妥協して親父と結婚したわけで」
「全員がスターにはなれませんよ。みんなが優しくて成功してる、絶世の美男美女と結婚できないのと、同じです。それに……」
「それに?」
「街に一軒ぐらい花屋がないと、なんだか、寂しいですよ」
「……そっか」
圭助はペットボトルのお茶を飲みながら、苔玉を眺める。
すると「ここは何のお店なの?」と、初老の女性が屋台に近づいてきた。
おじや専門店です。千尋は明るく笑って答える。
女性は目を丸くして、鶏のおじやを持ち帰りで注文した。
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