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店内に入り加那を先に椅子に座らせた。
拓郎は珈琲を二つとクッキーを注文しそれを受け取ると、足早に加那のいる席へと戻る。
加那の対面の席へと腰かけ様子を窺うが、依然その表情は明るくない。何かを考えているのか下を向き、両手で頭を抱えている。
「あの人達、死んじゃったりしてないよね?」
子洒落た店内での第一声、加那が重い口を開く。その声は僅かに震え、その声色から加那が相当想い詰めている事が伺える。
こんな時、なんて返事をしたらいいのか正解なのかわからない。
ーー絶対に大丈夫だよ!!
なにを根拠に?
ーー解らない
余計に不安を煽るだけでは?
様々な思考を張り巡らせるが、拓郎はハッとした表情を一瞬見せると、自身のスマートフォンを取り出し操作し始めた。やがて拓郎は画面を加那へと向けると様々なサイトを加那に見せはじめた。
「ほら、どこにもなにも書かれてないよ」
ニュースサイト、SNS、某巨大掲示板ーー鼠、大量発生、竹の花。思いつく限りのサイトで、それらのワードを検索する。
次々開かれるサイトの食い入るように見る加那。拓郎はこうする事が加那を一番納得させる近道だと知っていたのだ。
「結構な人数の人が居たんだ、それも俺たちとそんなに年齢の変わらないくらいの人達が多かった。なのにネット上にはなにも書かれていない。死人なんか出たらそれこそニュースになっていても可笑しくない筈なのに」
拓郎は思いつくあらゆるワードで検索を繰り返す。しかし、今日の出来事がヒットすることはなかった。やがて、表情が落ち着いてきた加那の口から、眺めの安堵の溜息が聞こえてきた。
「良かった、、、良かったー!!竹の花なんか見ちゃったから本当に不吉な事が起きたのかと思っちゃったよー!」
安心したのか周囲の目も気にせず大声で安堵する加那。店内の視線が二人に集まる。
「ちょ、加那。声デカいって、、、」
人差し指を鼻先に付け、周囲の視線に顔を歪ませながら言う拓郎。
加那も視線に気づき、反省したように背中を丸める。その表情は視線を受け紅潮しているが、先ほどよりも顔色も良く、表情も柔らかい。
そんな加那を見て拓郎からも安堵の溜息が少しこぼれる。
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