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「やっぱりな、その沈黙がもう答えや。それなら尚更俺は行かなあかん」
一体なにがこの男の目的なのだろうか。
まるであの場所で起きた事を知っているかのような口振り、そしてそれを知っている上で行かなければならないと言う。
「きっともうすぐこの辺は常識が通用せぇへんなるで。早いとこ離れときや。、、まぁもう遅いかもしれへんけど」
蓮治はそう言うと、スマートフォンを片手に人混みの中へと消えて行ってしまった。
蓮治の最後の台詞が妙に引っ掛かる。
常識が通用しなくなる?もう遅い?一体なんの事を言っているのかさっぱり解らない。
「なんなんだよ、、、」
拓郎は一人取り残されポツリと呟くと、再び帰路を歩み始める。一人で考える事に嫌気が差したのか、はたまた立て続けに起きる変な事に、脳が思考する事を拒否したのか。拓郎は無意識にスマートフォンを取り出すと、加那へと連絡をする。
ーーなんか変な男と会って、よく解らない事言われたんだけど。
拓郎のメッセージにすぐに既読がついた。
ーー変な男って?
加那の返事に今までの経緯を全て話す。滝上蓮治という男が現れた事。【竹の花】というワードにやたら興味を持っていた事。そして今、巌洸寺へとその男が向かっている事を。
「常識が通用しなくなる」という蓮治の最後の言葉は不安にさせてしまうと思い、加那には話さなかった。
ーーその人、、大丈夫かな?
加那の返事に拓郎の足が止まる。
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