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ライトで照らされた女の姿を見て背筋に冷たい汗が流れる。
女の露出された肌という肌は鼠の歯形で埋め尽くされ、傷口からは血が垂れ流れている。そして女がしきりに踏みつける足元には丸々と太った鼠の死骸。
その柔らかそうに膨らんだ腹目掛けて、女のヒールの先が何度も何度も打ち付けられる。
臓物が穴という穴から噴出し、最早原型が生き物だったのか、はたまた真っ赤に熟れた柘榴だったのかさえ判断がつかない。
「なんだよコレ、、、」
腰が抜けたのか尻餅をついたまま立ち上がる事が出来ない。足は震え、全身が硬直する。
ライトに照らされた女は足元の鼠を潰し終えると、上半身のみを捻らせゆっくりと此方へと振り向こうとしている。
早く此処から逃げないとヤバい、脳はしきりに警鐘を鳴らすが体がいうことを聞かない。
立ち上がろうと必死にもがく拓郎。震える足を拳で殴り付ける。そうこうしている内に女の顔の半分が露になり、焦点のあっていない目で拓郎を睨み付ける。
「ナニミテンダヨ」
それはまるで機械のような抑揚のない声でそう言った。拓郎の全身に電気が流れたような衝撃が走る。
「はよ立て!このままじゃ君もアレみたいになってしまうで」
声の主は拓郎のスマートフォンを拾い、拓郎の脇を抱え立ち上がらせようと担ぎ上げる。
拓郎が横に視線を向けると、必死に拓郎を抱えようとする蓮治の姿があった。
やっとの事で立ち上がるとまるで金縛りが解けたかのように体が動くようになる、拓郎と蓮治が同時に女に背を向け、走り出したと同時に背後から女の絶叫が聞こえてくる。
「ニガサナイニガサナイ!!!アハハ!!ハハハハハハ!!!!」
笑いながら叫び続ける声を背に、二人は山道を一目散に駆け降りる。
女はヒールを脱ぎ捨てたのか、ペタペタと地面を素足で蹴る音をたてながら、凄まじい勢いで迫ってくる。
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