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なんども躓きそうになりながらも足を止めず駆け降りる二人。相変わらず背後からは女の絶叫と笑い声が追いかけてくる。
「なんなんだよアレ!?意味がわかんねーよ!」
前を走る蓮治の背中に向かって叫ぶ拓郎。
「話は後や!今は取り敢えず走れ!」
振り返らず叫ぶ蓮治。
二人は視界の悪い山道を全力で駆け降りるが、女の声は女の声が背後からはやむ気配がない。
暗闇で良く見えない下り坂を僅かな視界の情報だけを頼りに走る二人。地面から競りでた石がまるで、二人の行く手を拒むように至るところで顔をだしている。
背後から強烈に感じる視線と、今まで感じた事のない自分に向けられる悪意。それが自然と拓郎の視線を後ろへと向けさせる。
暗闇という条件は同じはずなのに、女は拓郎の後ろをピッタリと着いてきていた。
黒いシルエットでしか判断できないが、女が酷く顔を歪ませ笑う顔が脳裏に浮かぶ。
全身に走る鳥肌。
それを感じると同時に足先に走る激痛と体が浮遊する感覚。
「しまったッ、、、!」
そう声を漏らし、次に目を開けたときにはすでに拓郎の体は地面に叩きつけられていた。
頬に走る痛み。湿った土が口の中に入り、苦い味が口内に広がる。
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