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「ヤット、トマッタ。ニゲンジャネーヨ」
女は拓郎の足を掴み強く握りしめる。
足を必死にばたつかせ、なんとか振りほどき、這うようにして逃げる拓郎。
しかし女は拓郎の足へ飛び付き、次は全身で抱き締めるようにしてしがみつく。
女の冷たい生温い体温が布越しに伝わってくる。
「ニゲンジャネーヨ、ニゲンジャ、、、アハハ、アハハハハハハ!!」
必死にもがく拓郎の体を這うように、女はだんだんと拓郎の上半身へと這いずってくる。
太もも、腰、腹、胸。そして拓郎の首の位置まで上り詰めた女が拓郎に馬乗りになり、完全に拓郎の動きを封じる。
女の傷だらけの顔が拓郎へと近づいてくる。
剥き出しになった女の歯が確実に拓郎の首もとへと近づいていく。
「や、やめろーー!!」
拓郎の叫びと同時に女の右頬が凹む。
頬の肉が反対へと押し出され、眼窩から眼球が飛び出る。そしてスローモーションのように顔を歪ませた女が拓郎の視界から捌けていく。
ーーグシャリ
映像よりも遅れて聞こえてくる不快な音声。
馬乗りになっていた筈の女は横へと弾け飛び、その身はビクビクと何度も痙攣を繰り返し、口の両端からは泡が零れ落ちている。しかしその閉じかけた瞼の中の瞳は、未だ拓郎を睨み付けていた。
拓郎の横で激しい息づかいで呼吸をする蓮治。その両手に握られた石には血液と思われる液体がベットリと付着し、頭髪をつけたまま削り取られた肉片がぶら下がっていた。
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