良心の阿責

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「正面玄関は人通りがある可能性がある。裏口から行こう」 蓮治はマンションの裏側へと回ると、綺麗なマンションに似合わない錆びた扉の前で立ち止まる。ポケットの中からキーケースを取り出し、鍵をいくつか合わせた後、錆びて軋む音を立てながら扉がゆっくりと開いた。 扉の先は薄暗い階段が続いており、非常灯の緑の明りだけが階段を照らしている。 上へと果てしなく続く階段を見て拓郎から落胆の声が漏れる。 「これ、、、何階まで登るんだ、、、?」 「部屋は12階や。誰かに見られん内にさっさと行こうか」 そう言って階段そそそくさと登り始めた蓮治だが、拓郎の足音が続いて来ない事に気づくと後ろを振り返る。扉を潜ってすぐの小さな踊り場で拓郎は両膝に手を付き立ちどまっていた。 拓郎の疲労がすでに限界を迎えているのは当然の事である。朝から山を登り、そして駆け降りる。そんな事を1日に2度も繰り返しているのだ。それに立て続けに起きた奇怪な事に精神的にもかなり疲弊している事は確かだ。 壁に背を預け、そのままズルズルと崩れ落ちるように座り込んだ瞬間に猛烈な眠気が襲いかかってくる。 「おい!しっかりしや!、、おい!」 グルグルと揺れる脳内。薄れゆく視界の中、必死で拓郎の身体を揺すりながら呼び掛ける蓮治の姿を最後に、拓郎は気絶するように眠りについてしまった。
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