O.Aガール!

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 答えられなかった。だって、ただ手柄を取ることだけしか考えてなかったから。恥ずかしくて、答えられるはずもなかった。  同期なのに、彼は一歩も二歩も先を言っている。  黙ってしまった私の手から、彼は新聞を取り上げる。 「新聞は僕がやっておくから、やらなきゃいけないことがあるんじゃないの?」 「でも私、取材はおろされて――」 「簡単に諦めるんだ? 友達に誤解させたままで。あんなに張り切っていたのに、朝未さんは何をしたかったの?」 ――私は何をしたかったの? スクープを取りたかった?  ううん。違う。  中野さんに認められたかった? そうだけど、でもそれだけじゃない。  ニュースと真摯に向き合う中野さんのようになりたいと憧れた。  ……それを忘れていた。 「ありがとう。私、頑張ってみる!」  私は中央の円卓に放置されていた火事の新聞コピーを取り、それを片手にパソコンの前に居座る。  報じられていること。ネットでの評判。気になることをノートに書き込んでいく。大型掲示板では、推理合戦が行われていたりもした。やはりタッキーが犯人なのではないかという声が大きい。本人やその友人のSNSなどをサルベージしている人もいる。明らかに楽しんでいる。 「こんなことされたら……そりゃあ嫌いにもなるよね」  さすがに罪悪感を抱き始め、ページを閉じようとしたとき。目に入ったSNSのやりとりに、私は違和感を覚えた。SNSについてのやりとりが始まったところまでスクロールをして戻り、真剣に記事を読み始める。  何時間かして、月曜班の皆が帰ってしまった後にようやく理解した。  こんな画面を通しては、真実は見えない。所詮誰かの意見なのだ。  私が知っている昔のタッキーのこと、林くんのこと……そういう実際に見たものは、決して出てくることはない。 「そっか、現場での取材と、編集されたものの違いなんだ」  編集してしまえば、“事実”はどうにでもなってしまえる。編集するということは、どう伝えるかということだ。  私はもう現場を見てしまった。そしてタッキーがそんなことをする人ではなかったということを知っている。この事件を編集するのは中野さんだけれど、私はそこに口を挟むこともできる、……まだできるはずだ。 「そうと決まったら!」  私は共有物の詰め込まれたロッカーを開き、目的のものを持ち出すと、帰り支度を始めた。
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