O.Aガール!

13/16
前へ
/16ページ
次へ
「林くんの様子も、いくらマスコミが嫌いだとしても不自然なものでした。昔のことしか知らないけど、彼はちゃんと平等に意見を聞いて判断をする人だったんです」 「だとしても、先走りすぎだぞ。チーフにも知らせてないんだろう?」 「う……すみません」  怒られるだろうか。やはり怒られるだろう。勝手に張り込んで、警察沙汰になって。  しかし中野さんはくっくっと口の中で笑いを噛み殺している。 「しかし、おまえ意外とへこたれねえな」 「へ?」 「人を呼び出しておいて、何も掴めてねえなら、チーフからの大説教だな」 「黙っててもらえるんですか!」 「ってことは、何か掴んだな?」  私を見下ろす中野さんの目は、獲物を見つけた鷹のように鋭く光っていた。  これだ。この視線から、私が憧れていた“報道”が生まれるのだ。  だけれど……私は旧友を売ることになるのだろうか。ゴミとかクズとか言われる腐った報道陣になるのだろうか。 「おまえが不安になってることはわかる。でも報じるべきは“真実”だ。まだ俺たちはその真実の片鱗しか見ていない。想像を断言するな」  中野さんの言わんとすることが初めてわかった。  私たちは警察でも探偵でもない。事件を推理する立場じゃない。  合ったことを誇張も偽りもなく、世間に広しめることが仕事だ。  そのための取っかかりを私は手に入れた。けれどまだそれで全てがわかるわけじゃない。 「本人に訊きたいです。訊いて見せます。何が起きたのか」  中野さんはようやく満足そうに微笑を浮かべた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加