中村 健太(ナカムラ ケンタ)

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 「よし、ワーム作成完了。」  後はこいつを転送してやるだけだ。今回も大したことは無かったな。  僕は、僅か4畳ほどしかない窮屈な部屋で、発注用のコンピューター・ウイルスを作っていた。  後はこいつをクライアントの元に送れば、給料が振り込まれるようになっている。無論、幾つものサーバーを経由した上でだが。  僕は日陰者だ。裏社会で名の通った人物と交流し、彼らとのビジネスで生計を立てている。  クライアントからの要求はウイルスだったり指定サーバーへのハッキングだったりと様々だが、いずれも非合法な商売である。  今の生活拠点も、彼らの内の一人に提供してもらったものである。資材コンテナを改装して仕立て上げた、僕の拠点。  たった4畳しかないコンテナに住みたがる変わり者は、僕ぐらいのものだろう。  狭ければ狭いほど、心が安らぐのだ。土地も込みでの大サービスだった、というのもあるが。  勿論、こんな僕でもかつてはお天道様の下で暮らしていたこともあった。  しかし神様というのは残酷なものだ。僕は小学校と中学校に通い続けている間、止むことのない迫害に晒され続けた。  それだけじゃない。小学校4年生の時に両親が離婚して父親に引き取られ(母親はパチスロ狂だった)、その父も中学2年生の頃に事業に失敗し、僕を残してこの世を去っていった。  まだ義務教育も終わっていないというのに、勝手な親である。  母親もとんだクズ野郎だったが、父親も僕を引き取った途端に豹変し、飲んでは僕を殴り、罵声を浴びせる粗暴な男と化していた。  事業に失敗したのも当然だ。 「チッ、胸糞悪いぜ。思い出したくもない。」  全く、何なんだ今日は。妙に気分が高揚している。イライラする。さっさと今日の分を片付けてしまおう。  軽く伸びをした後、意を決し僕はディスプレイに向き直った。
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