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「何だこれ?」
広告には、「あなたもプログラミング、始めてみませんか?」という白抜き文字が、仰々しく身を躍らせている。
何が始めてみませんか、だ。馬鹿馬鹿しい。僕を誰だと思ってやがるんだ。
憤慨しながら広告を破り捨てようとすると、下の方にある人物が見えた。
「宮川、康彦。」
そこには30代ほどの壮年男性が、爽やかな笑顔を浮かべて対談に応じている姿が写し出されている。
この男は、いつだったかの取引相手によく似ていた。
何でも憎たらしい相手がいるんで、そいつのデータを滅茶苦茶にしてやりたい、とのことだった。
対象のデータを破損させ、証拠を隠滅するだけで数百万。この手の依頼にしては破格の報酬に目がくらみ、僕はうっかりその話に乗ってしまった。
案の定、作業途中に突然キャンセルされちまったんで、折角の大型契約は御破算となってしまった訳だが。
しかも中途半端にターゲットのサーバーに侵入していた為、痕跡を消す手間もかかってしまった。
この世界では必要以上に互いの素性を探ることはしないのが普通だが、
その時はかなり頭にきたんで、個人情報を徹底的に調べ上げて然るべき所に晒してやったものだ。
同業者たちもこいつの身勝手な行為には悩まされていたらしく、それを知るや否や、すぐに表舞台でもコイツの消息は途絶えた。ざまあみろってんだ。
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