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しかし気になるのは、どうして奴が講演会を開くまでに大々的に動けているのか、
そもそも、何故こんなダイレクトメールが僕の元に届いてきたのか、ということだ。
「匂うな。」
今までも、あの管理人を通じて郵便物が届くことはあった。その殆どが、たわいもないモノばかりだったが。
だが、今回は何やら陰謀めいたものを感じる。誰かが、恐らくアイツが、この僕を誘っているのだ。
「ふん。そっちがその気なら、受けて立つまでよ。」
いくら探れども尻尾すらつかめない、あの人物。僕と大口契約を交わし住処まで提供してくれた、謎に満ちたクライアント。
考えてみれば不自然だった。そんな話をしたことは一度も無かったにも関わらず、アイツは突然、住居を提供しましょうと提案してきたのだ。
まるで、俺が家も無く、独りであちこちを転々としていたことを全て知っていたかのように。
手紙にはハガキが添えてある。予約制ということなのだろう。
僕はアイツからの招待を受けるべく、ハガキに必要事項を記入し、管理人に渡すべく身を屈めながら立ち上がり、鉄の扉を押し開ける。
差出人の欄に、ジョーカーと添えた挑戦状を手にしながら。
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