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扉の向こうもまた、ロビーと同様に中は真っ暗だった。
何かがおかしい。改めてこの建物の存在そのものに疑念を抱きつつも、部屋の中に足を踏み入れる。
ロビーの明かりを頼りに点灯スイッチを探すが、今度はどこにも見当たらない。
手探りで見つけようと部屋の入り口から離れた、その瞬間。
「うわっ!」
あり得ない早さで、扉が乱暴に閉じられた。一瞬で、室内は闇に閉ざされる。
すると間髪いれず、室内を無機質な光が覆い尽くした。照らされているのでは無く、部屋全体が発光しているのだ。
あまりの目映さに、思わず視界を覆う。突如として発生した室内の異変に、俺は戸惑いを隠せなかった。
「何なんだよ、一体……ん?」
しかし、異変はそれだけでは無かった。
白き光を帯びたタイル張りの世界で、呆然と立ち尽くす一人の女性。
淡いパステルカラーの衣服を身に纏った、その女性。
両手を虚空にさまよわせ、緩やかなウェーブのかかった栗色のショートヘアを揺らしながら、小柄な彼女は怖ず怖ずと、俺を上目づかいで見つめる。
「レン君!……じゃない。あなた、誰なんですか?」
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