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「もう、またなの?」
久々のお休みだって言ってたのに。私の王子様は、今朝も側にいなかった。どうしてなの。
見ると、テーブルの上には何時ものように書き置きがしてあった。
「加代ちゃんへ。本当に申し訳ないけれど、急に仕事が入っちゃった。
今日は休みだからホントは遊びにでも行きたかったんだけど……ホントごめんね。レンより。」
「レン君。」
まただ。最近のレン君は、こうやって直ぐ私から逃げようとする。
本当に忙しくても、せめて私を起こしてキスの一つもしてくれたって良いじゃない。
仕事なら仕事で、ちょっと合間を縫って電話してくれたって良いじゃない。
私はここ最近、一度たりともレン君と顔を合わせていない。
ほんのちょっと前までは、ずっと側にいてくれたのに。仕事に行く時でさえ、離れ離れになるのは嫌だって言ってたのに。
「レン君!遅刻しちゃうよ!」
「嫌だ!加代ちゃんと離れたくないよ~」
「私だってイヤだよ!でも、会社に行かなきゃ辞めさせられちゃうよ!いいの?」
「加代ちゃ~ん……」
普段は頼りなくて意気地なしの我が儘さんだけど、いざという時にはしっかり守ってくれる、私の大事な人。
「加代ちゃん。」
「レン君。」
「ハッキリ言うよ、加代ちゃん。僕は君のことが大好きだ。
しっかり稼いでくるから、君に辛い思いは絶対させない。
だから、僕の奥さんになってくれませんか。」
「……レン君!」
いつもと違って、迷わず真っ直ぐに伝えてくれた。カッコ良かったなぁ。
プロポーズの後、私たちは間をおかず新婚旅行に行き、何とか両親に納得してもらってから、籍を入れて式を挙げた。
新婚旅行では知らない人に絡まれた私を助けて、悪い人たちをあっという間に倒してくれた。
私の両親の家まで挨拶に行った時には、土下座までして、頑固なお父さんとお母さんを説得してくれた。
情けない所もあるけれど、本当は強くて優しくて、私のことを一番に想ってくれる。そんなレン君が、私は大好きだった。
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