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ーーすると私の願いが届いたのか、手元の携帯が明滅する。
「レン君!?」
迷わずそれを開き、通知の主を確認する。いや、するまでも無かった。だって、電話帳にはレン君のアドレスしか登録されてないのだから。
「もしもし、加代ちゃん?いま仕事で忙し...」
「忙しいじゃないよ!どうして電話に出てくれないの?電話だけじゃないよ。メールだってした、手紙だって書いた!何で、何で私から逃げるの!?」
「いや別に逃げてる訳じゃ...」
「どうして言い訳するの!?私のこと、嫌いになっちゃったの?レン君!ねぇ、ねぇってば!」
止まらない。止められない。私はレン君を責め立てる。
久しぶりにレン君とお話できた。声が聞けた。そのことは嬉しかったけれど、それでも、思いの丈をぶつけずにはいられなかった。
「どうして...何で...レン君...」
そう言うと、私はまくし立てるのを止めた。
永遠にも感じられる沈黙の後、受話器越しにレン君の悲痛な声が聞こえてきた。
「ごめん、本当にごめんね。加代ちゃん、いや、加代子。」
「僕はただ、仕事に専念することしか頭に無かった。君の気持ちなんて、これっぽっちも考えてなかった。」
私は尚も押し黙ったままだ。
「プロポーズした時、言ったよね?君に辛い思いはさせないって。
君がこんなにも苦しんでいるのに、僕は、加代子と向き合うことすらしなかった。
...僕は最低だ。」
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