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「はい?」
「だから、死相が出てる。あんた、近いうちに死ぬよ」
前言撤回。このお爺さんは何を言っているんだ。
周りで無関心を決め込んでいた人々も、何事かと一様にこちらを向いた。そりゃそうだ。
仕事終わりで各々が物思いに耽るか呆然としている中で、死ぬだの何だのと聞こえてくるのだ。そりゃ、誰だって怪訝に思うことだろう。
「はぁ」
するとお爺さんは何を思ったか、突然ああっと叫びだした。何なんだ一体。
そして俺をじっと見て、
「けどお兄さん、あんたからはオーラを感じる。あんたには、人を引きつける力がある」
「ほかの誰でもない、あんたが信じるあんたを信じな」
「わ、分かりました……」
とは言ったものの、流石に堪えられない。この人、何か変だ。周りの人も俺たちをメッチャ見てくるし。
そもそも死相が出てるって言われた後に、自分を信じろと言われてもなぁ。
俺はお爺さんと周囲のプレッシャーに冷や汗をかいた。さっきまでの調子が嘘のようだ。
もう相手にしなくても良いよなと思い、俺は目を閉じた。そして、俺は物思いに耽った。
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