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「よし、完成!」
「ふわっ、とろっ、なオムライス、でーきーたーぞっと」
今日は我ながら、良い感じにできたもんだ。偉いぞ私。ニクいね私。
「レン君、早く帰ってこないかな!」
「早く帰って、こないよね。今日も」
レン君は、おっきな会社のサラリーマン。バリバリ仕事をこなし、バリバリ出世してる、私の自慢の夫なのです。
それで私のこともたっくさん愛してくれる……いや、くれてたんだけど、最近は帰ってくるのがいっつも遅いんだ。
夕飯を用意して待ってても、結局私が寝た後に帰ってくるから一緒に食べれないし。朝起きたら、もう会社に行ってるし。
いつも夕飯ありがとう、って書き置きは毎朝残してくれてるんだけど、それだけじゃ私はイヤなのです。
休みの日も休みの日で、気がついたら外出してるし。帰ってくるの遅いし。
「ねえ、ヤミーちゃん。私、どうしたら良いと思う?」
ヤミーちゃんは、私の縫いぐるみだ。三年前の新婚旅行の時にレン君が買ってくれた、ふかふかの毛皮の縫いぐるみ。
私がヤミーちゃんって名前を付けたら、加代ちゃんはホントに食い意地張ってるね、ってレン君にからかわれたっけ。懐かしいなぁ。
ヤミーちゃんの毛皮は今でもシッカリ手入れをして、大事にしてます。だって、レン君がくれたものだから。
「レン君、私のこと、どうでもよくなっちゃったのかなぁ」
いや、そんなことは無いよ。多分。レン君は忙しいだけだから。
「そうだね、ヤミーちゃん。明日、仕事休みだからレン君に聞いてみるよ」
はぁ、いくら可愛いからって、縫いぐるみのヤミーちゃんに話しかけてどうするのよ私。バカバカ。
でも、本当にそうしよう。明日、レン君にあたしのことどう思ってるか聞いてみよう。
それで、明日はレン君に美味しいものを沢山作ってあげよう。
「決めた!」
とりあえず、このオムライスはラップかけて冷蔵庫に入れておかなくちゃね。
そして、私はレン君が帰ってくるより先に、夫婦共用のダブルベッドに身をうずめる。
「おやすみ、レン君。また明日」
明日にはきっと、また一杯お話できるよね、レン君。
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