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「ふぅ、終わった。」
プレゼンを終え、俺はいつもの仕事場であるオフィスの一室に戻ってきていた。
今は休憩中だが、普段はキーボードの打鍵音や傍らを行き交う同僚、響き渡る上司の罵声で騒がしい。
一仕事終え、自分のデスクの上でぐったりと身をもたせていると、
「それはどちらの意味かな、智也クン。」
でた、お調子者。先ほど俺に不快な笑みを浮かべていた顔の主が、隣に座り頬杖をついて俺に絡んでくる。
「からかいに来たのか、有沢。」
「違う違う。そうじゃないよ。思ったより良かったよ、今日のプレゼン。」
「そりゃどうも。」
俺が素っ気なく答えると、有沢は無駄にオーバーな身振り手振りを交えながら、
「何か、冷たくない?そこはさ、あの有沢が人様のことを誉めただってぇ!?って突っ込むところでしょうよ。
もしかして、結構へこんでた?」
「いや、そんなんじゃないよ。むしろ有沢には感謝してるさ。プレゼンの指導から推敲まで全部つきっきりでやってもらったんだからな。
ホントありがとう。グッジョブ有沢、あんた最高だよ。よっ、日本一。」
そう言いながら、俺は口に手を当て叫ぶポージングを取る。
「おうおう、そこまで言われると照れるじゃねぇかハートのマイフレンドよっ。なんて言うとでも思ったかヴァカ!そんな棒読みで言われてもうれしかないわい!人の恩を仇で返しやがってよぉ!!!」
「ちぇっ、バレたか。」
「バレたかじゃないよ!ミエミエなんだよ!ってお前、何かあったのか。」
「どうして?」
「だってさ、昨日まであんなに初仕事の御披露目だー!って張り切ってたのに、今日はプレゼンの前から神妙な面持ちをしてるんだもの。」
「緊張してたんだよ。」
「まあ、確かにそれもあっただろうけどさ。各店舗の方針に関するものだったし。」
「そういうことさ。」
「そういうことさ。じゃないよ!腑抜けちゃってさぁ。
いいから、昨晩何があったのか俺に話してごらんよ。どうせ一目惚れしてしまったあの人が忘れられない、とかそんな話でしょ?
俺が全て受け止めるぜ、心の友よぉ~」
……やっぱり、こいつは鋭いな。伊達に何年も友達をやってないってもんだ。
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