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蜜隣ーmitsurinー
白いシャツの隙間から見え隠れする厚い胸板。その胸板は、カーテンの隙間から射し込む冬の白い陽射しによって照らされている。
彼は私の膝に手を置きながら黒縁眼鏡を外し、リビングのテーブルに置いた。
私の頭を抱え込むようにして覆い被さる彼の甘い香りは、また今日も私を狂わせていくーーーー。
ーーーー蜜を求めて彷徨う蜂の様に、気が付けば私は彼を求めてしまう。
結婚して子供が出来、何不自由ない暮らしをしてきた。家事を積極的に手伝ってくれる夫。天邪鬼だが可愛い笑顔を向けてくれる息子。
不満など何一つ無い毎日だった。
全ての過ちはあの日。
彼が私の家の隣に越して挨拶に来たあの日から。いや、もしかしたら十年前に彼と出逢った日からこうなる事は分かっていたのかもしれない。
何も変わっていない彼の声と甘い蜜のような香りは、私の心を十年前にタイムスリップさせたんだ。
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