蜜隣ーmitsurinー

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全てを見透かすような視線を私に向け続ける彼に、私は怒鳴るでもなく泣き叫ぶでもない口調で声を震わせる。 「私があなたの事を好きだとして……それをからかう為に私と帰ろうと発言したのなら……謝ってください。私は地味で、暗くて、あなたと肩を並べて帰れるような人間じゃない」 吐き捨てるようにそう言った私は彼の手を振り解いて廊下へ飛び出した。彼も続けて飛び出す。 廊下に生徒の姿は無く、逃れても逃れられない二人の空間が続く。 「何で自分をそんな風に言うんだ?俺は別にお前をからかおうなんてこれっぽっちも思っていない。勝手に自分をランク付けして、勝手に落ち込んで、勝手に苦しんで……そんなお前を見たくないんだよ」 眉間に皺を寄せながらそう告げる彼は、私の手を優しく握る。 「俺も多分、いや、ずっと前から……お前の事が好きだった」 それから数日後、私は彼と付き合うことになる。
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