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自分のクラスのページに視線を落としながら、彼は静かに語り始めた。
「十年前、急に消えて悪かった。別れようって言葉だけでも言って消えていればと今でも後悔してる。でも、美沙がこうやって幸せな家庭を持っている事が分かって安心した」
テレビボードの上に飾られている家族写真を見つめながらそう言った彼は、アルバムを元あった場所にゆっくり置いた。
そして、窓ガラスの方に身体を向けながら上着を脱ぎ、インナーも続けて脱ぎ始めた。
突然上半身裸になった彼を驚いた目で見つめていると、何かを決意したような表情と共に此方に身体を向ける。
彼の腹部には二十センチはあるのでは無いかと思われる太い傷が縦に入っていた。
「どうしたの……それ」
傷を直視出来ない私は目を逸らし、声を震わせて尋ねる。
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