蜜隣ーmitsurinー

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二ヶ月前。 チャイムが鳴ったのは、夫が息子と図書館へ行っている時だった。 皿を洗っていた私が音に反応してモニターを見つめると、紙袋を持った女性と寄り添うように立っている背の高い男性の姿が映りこんだ。 『そっか……お隣さん、昨日越して来たんだった』 私は濡れた手を慌てて拭き、モニター下部にある通話ボタンを押した。 「はーい」 私が声を掛けると、女性は安心した表情で頭を下げ口を開く。 「隣に越して来ました堂本(どうもと)です。ご挨拶をと思いまして」 顔や服装を見る限り私よりも年下だが、言葉使いは丁寧で落ち着いている。 「わざわざすみません」 そう言ってパタパタと玄関まで駆けて行った私が扉を開くと、モニターに映っていた女性は百貨店の紙袋をスッと差出しニコッと笑った。 その笑顔よりも、開くと同時に鼻に入ってきた懐かしい甘い香りに視線が動く。 それは、蜜のように甘い香りだった。 「堂本です。あっ、後ろに居るのは主人です」 その言葉を掛けられるより先に視線は男性の方に向いていた。まるで亡霊を見た様な状態の私を不思議そうに見つめる女性。 「あの……どうかされました?」 その言葉と同時にすぐに視線を逸らし、差しだされている紙袋を受け取る。
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