蜜隣ーmitsurinー

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「見ての通りだよ。俺……病気なんだ。今の嫁は俺の担当だった看護師でな、病院で出逢って、なんとなく付き合って、なんとなく結婚することになった。 そうそう、この傷の説明をしないといけないな。美沙と付き合ってから数ヶ月後、俺は急性リンパ性の白血病になった」 「白血病?」 テレビや新聞でしか見聞きしていない言葉に、頭の中が真っ白になっていく。 「あぁ……実際、この歳まで生きれているのが不思議なんだ。身体中に癌細胞が転移したのにな。十年前に俺を担当した医者にも余命三年って宣告もされた」 「私の前から姿を消した理由って……」 「それ以外にある訳無いだろう?あの時俺は……美沙の事を本気で愛していた。今日ここに来たのは、十年前勝手に消えた事をお前に謝ろうと思っ……」 私は彼が言葉を言い終える前に、彼の胸に飛び込んだ。 傷を隠すように私は自分の身体を押し付け、彼の背中に腕を回す。 「おいおい、こんなことしたら……旦那に怒られるんじゃないか?」 「あなただって一緒でしょう?奥さんの目を盗んで私の家に来るなんて。 私だって……私だって蓮の事を愛してた。あの時、私がどれだけ辛かったか分かる?あなたの笑った顔が、声が、香りが突然無くなった時の辛さ……」 大粒の涙を流しながらそう告げる私は、蓮の身体を抱き締める力を強くしていく。
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