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蓮の身体から香る蜜の香りも強くなっていく。
「そんな感じで来られたらさ、俺も冷静でいられなくなる」
蓮はそう言って私の唇に自身の唇を重ねた。当たり前のように浸入してくる舌を絡めている間に、雪は降り始めた。
乾き始めていた洗濯物が雪に濡れていくにも関わらず、私は発情期の雌猿のように彼の愛撫に応えながらソファに押し倒される。
もう戻れない。
冷静に行為を見つめている数ヶ月前の私。そんな視線を無視するように、私は彼の身体を欲望のままに求めた。
夫の顔も息子の顔も、消えていた。
後悔するのは分かっている。この行為の先に幸せなんて無いのは分かっている。この罪の十字架は死ぬまで背負わないといけない。
それでも私と彼は、十年間逢えなかった時間を埋めるように求め合った。
数分後、ソファで朽ち果てた私の目に映る息子の玩具。
罪悪感で気が狂いそうになる私の肩に、彼は優しく手を置いた。
「今日の事は無かった事にしよう。俺は美沙の家庭を壊す為に現れたんじゃない」
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