蜜隣ーmitsurinー

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ーーーー十年前、高校三年生の教室。休み時間には女子の恋愛トークが至る所で花を咲かせていた。 そんな話に混れない地味な私は、数年前に流行った文庫本を静かに読んでいる。 「堂本くんってカッコいいよねー!眼鏡取ったらもっとイケメンかも!」 「いや、あの眼鏡がいいんだって!レンズ越しに見えるクールな目、最高だと思うけど?」 普段は気にしない女子の会話も、堂本君と言うワードに私の耳は反応する。 女子を差別することなく話をしてくれる堂本君は、カースト上位の女子達だけでなく、私のような最下層の女子にも人気だった。 本を読むというよりも文字を目で追っているだけの状態になってしまっている私は小さく溜息を吐きながら壁に掛かった時計を見つめた。 それと同時に鳴るチャイム。ぞろぞろと帰って来る男子達。その中にはもちろん彼の姿もあった。
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