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「というか、俺これが結婚だって知らなかったし、知ってたらOKしてないよ!」
騙し討ちみたいだと、大きな瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちる。彼の涙を見た瞬間、僕は自分がとんでもないことをしてしまったのを知った。ヒイラギを泣かせてしまった。どうしよう。普段は冷静さが取り柄の僕なのに、どうして良いか判らない。こんなときになにを言えば良いんだろう。婚姻を取り止めようにも、魂を結びつける契約は解除できないのだ。
それを告げると、彼の瞳からますます涙が溢れてきて、まるで洪水みたいになった。僕はごめんねと必死で何度も謝ると、彼を抱き締めて優しく何度も背を撫でる。綺麗な瞳が溶けてしまったらどうしよう。
「ヒイラギ、愛してるよ」
だからいつも側にいて欲しいし、ずっと笑っていて欲しい。
「ヒイラギは僕のこと嫌い?」
もし嫌いって言われたらどうしよう。さっきから、僕、どうしようばかりだ。彼に嫌われたらもう生きていられない。
じっと彼を見つめると、みるみる内に頬が赤らみ身体中に広がった。いつの間にか止まった涙の跡を拭うと、困ったような表情が浮かぶ。優しくて健気で奥ゆかしい僕の召喚獣。くっついている身体がドキドキしてるのは、僕だろうか、それとも。
唇を尖らせて黙り込んだヒイラギに、僕は心が温かくなって自然に頬が緩んでくるのを感じた。
ヒイラギは僕を見て、酷く驚いた顔をしたんだけど、それを見た僕は、もっと嬉しくなった。
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