召喚者にお願い。

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 そんなのは嫌だ。元々召喚獣なんて必要性を感じないのだし、契約しないだけで問題が全部解決するのだから、とるべき道はひとつ。  彼の名前はヒイラギと言うそうだ。異世界の持つ神秘的な音の響きも素敵だ。  僕の召喚獣。僕のために喚び出された、僕だけのためにいる存在。その幸運に酔いしれた。 「俺、なんも役に立ってないよな」  食後のお茶を一緒に飲みながら、上目遣いで僕を見上げて来る仕草も可愛い。性格も控え目で謙虚だ。僕はこうして二人っきりで食事をするだけで幸せだというのに。  それを伝えたのだけれど、彼は不満そうに顔をしかめる。 「だって俺、サリューの宮殿に篭って、日がな一日ぶらぶらしてるだけだし」  しょんぼりと、肩を落とす。 「退屈だったら、なにか気の紛れるものを取り寄せようか? 楽団とかどうだろう」 「いや、退屈っていうか……。って、楽団はいらないから。俺、サリューの召喚獣なのに、他のヤツらみたいな力もないし、平凡だしいる意味あるのかなって」 「大丈夫だ、ヒイラギが一番美しい」  彼を取り巻く虹色の光はキラキラと輝いていて、眩しいくらいだ。それは誰より強いという彼の力の証。力強くそう請け合う。  こうして僕を一目で虜にするほど魅力的なのに、ヒイラギは眉をしかめて不満そうな顔をした。 「だって俺、ここに来てから外に出たの召喚獣のお披露目の模擬演習のときだけで、そのときだって力もなくてなにもできなかったし。一生に一度しか喚べない召喚獣なのに、こんなポンコツな穀潰しでごめんな」  しおしおと、そう、うな垂れる。そんな顔をさせたいわけじゃないのに。彼の不安を取り除いてあげるのは簡単だ。契約して力を解放させてあげればいい。でもそれはこの関係の終わりを示していて、彼との別れを意味している。  我が儘なのは解ってる。でも僕はどうしても、彼とずっと一緒にいたいんだ。  とりあえず彼に余計なことを吹き込んだ相手を探して処分することと、もうひとつ。ようするに彼が僕の側にいる理由があればいいんだよね。
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