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「ヒイラギは契約したいの?」
「したいのって、……サリューはそのために俺を喚んだんだろ?」
少し考えてから言うと、彼は戸惑ったような顔で頷いた。そもそも最初にそれを言ったのは、僕だしね。
「うん、初めはそのつもりだったんだけど……、実際ヒイラギと会って思ったんだ。僕は君を危ない目に遭わせたくない」
ぎゅっと、彼の両手を包み込むようにして握る。これは本心だ。召喚獣は召喚者を護るのが役目。彼は気づいてないだろうけど、僕の命が狙われるのは日常茶飯事で、相手はさまざまだけど、今日も先程一人片づけたところだ。
きっと命のやりとりをしたことなどないだろう、荒れたところの全くない、綺麗な手を持つヒイラギ。彼にそんなことをさせたくない。
「それにヒイラギの美しい顔に傷でもついたらと思うと……」
傷つけた相手の命を奪うだけじゃ生温い。ヒイラギは僕を優しい人間だと思ってるから、極力やりたくないんだけどね。
そんなことを考えていた僕は、彼の次の言葉に一瞬固まった。
「契約して力が発揮できるようになったら、俺家に帰れるんだろ?」
誰だ。ヒイラギにそれを教えたのは。絶対教えないよう、箝口令を敷いていたはずなのに。
「それに力が発揮できるようになれば、もう俺役立たずじゃなくなるし、サリューを助けることもできるみたいだし」
「役立たず? 誰かそんなことを君に言うやつがいるのか?」
「いるっていうか……」
聞き捨てならない言葉に相手を問うと、そう口ごもられる。やはり普段から言われているみたいだ。恐らく複数の、身の程知らずなやつらだろう。
「そいつらの処分は後でするとして、僕のことは気にしないでいい。召喚獣なんていなくても、自分と君の身くらいは守れる」
僕は自分を万能だと思ってはいないけれど、彼を護るためならいくらでも強くなれる気がする。
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