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「あ、あのサリュー? 役に立ってないのは事実だし、俺は気にしてないからね」
後、召喚獣って俺なんだけどと、慌てたように手を振るヒイラギ。自分を傷つけた相手なのに、なんて優しいんだろう。ますます好きになってしまうじゃないか。
「ヒイラギは優しいな。僕の役に立ちたいだなんて健気だし。外見だけでなく、心まで清らかで美しいんだね」
「その辺りの見解については、後ですごく反論したいんだけど。で、契約してくれないの?」
さすが僕の愛しい人は素敵だと、上機嫌の僕に彼はそう言い募って来る。
「契約したいの?」
「うん」
尋ねると、即答が返って来た。ふむ。
「解った。契約しよう」
僕はそう言うと立ち上がり、執務机の引き出しから小箱を取り出した。中に入っていたのは、手の平サイズで銀色の、シンプルな丸い輪っかが二つ。ちょうど昨日届いたばかりだ。
僕は彼の隣に座り直すと、左手を取り、輪っかを通した。輪っかは手首の辺りで留まると、彼の肌に吸い付くように縮んだ。その後自分の右腕にも同じように輪を通してもらう。
「じゃ、今から僕の言う通り繰り返して」
「うん」
『私ウツミヒイラギは、サリュー=フィリスを人生の伴侶とし、片時も離れることなく、生涯を共にすることを誓います』
ヒイラギは素直に僕の言葉を繰り返すと、最後不思議そうに首を傾げた。訝しげに眉が寄るのを見ながら、僕も名前を入れ替えた、似た文言を告げる。
台詞が終わると、お互いの腕輪がほんのりと光り始め、輪の表面を取り巻くように、なにやら文字が浮かび上がる。
「これで良いのか?」
「うん」
「じゃ、俺帰れるんだな」
「それは無理」
「へ?」
「今したのは婚姻の契約だから、召喚の契約とはまた違うんだ」
「なんですと!?」
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