ある音楽教室での少年少女の歌

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 れみちゃんは、お母さんの横でうさぎのように小さくふるえながら、ちらと鬼谷先生の顔を見たかと思うと、すぐに視線をそらしてグートルーネの方を見つめました。 さすがのグートルーネも、ここの緊迫した雰囲気に飲まれそうになりましたが、れみちゃんをなだめるように、また勇気をふるいたたせなきゃと自分に言い聞かせるように、そっと、大丈夫、とささやいたのでした。  「今日は見学者が来ているが、いつものようにやりなさい。ほら、そこ、よそ見しない。 いいですか、この音楽教室に通えること自体が、諸君が選ばれた精鋭であって誇るべきことなのですよ。ここがどんなに素晴らしいところか、諸君のその行動で、見学者の子たちに示してくれたまえ。」 (あの先生、とっても偉そうね...。私、ああいう人苦手…。) グートルーネは、第一印象から鬼谷先生に対していい印象を受けませんでしたが、彼からはとても強い気のようなものを感じました。 それは、彼の音楽に対する執念とでもいうべき強い気であり、その強い気からくる音楽性は、ほんものなのでしょう。れみちゃんのお母さんからも、そのような思いが感じられます。 そして、この音楽教室に通う子どもたちすべてが、そのような強い気からくる音楽性を持っているのだと感じました。
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