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ふしくれた指の指す先、カウンターから出て覗いてみる。
マンゴーと夏みかんのフルーツソース・レアチーズケーキの右となり、シトラス模様のちいさなカップに入れられた、淡い色のデザート。
「プリンです。普通のものは卵とミルクでつくるんですが、これはさらにオレンジのジュレを加えて、さっぱりと甘酸っぱい夏向けのものに仕立ててあります。上に乗せた生クリームは甘さを抑えているので、フルーティなプリンとよく合うんですよ」
淡いオレンジ色のプリンの上に、絞り出された白い生クリームが映える。シロップに漬けた剥き身のオレンジが三つ、クリームの周りに配置されている。すべてのてっぺん、中央には小さなミントの葉が添えられている。
プリンの上に薄く張られた透明なゼラチンの層が、店の灯りを集めて、きらりと光った。
ほう、と言葉になり損ねたような声を、和三盆刑事は零す。
「うまそうですな」
「今度買いにいらしてください。夏季限定の商品ですけど、しばらくは並んでるはずですから」
「そうさせていただきます。それでは、今度こそこの辺で失礼させていただきます。もし何か思い出したことがあったら、いつでも遠慮なくお知らせくださいね」
刑事たちはショウケースから目を離し、最後にまた一礼して、自動ドアを抜けていった。
二人がいなくなると、店のなかは急にがらんとして感じられた。
エアコンの風がひんやりとむき出しの腕をなでていく。不意に冷たさを感じて、手のひらで二の腕をさすった。
さっきまでは確かに少しではあるが、暑いと思っていたのに。
まだ自動ドアのガラスの向こうに、人の気配は伺えなかった。
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