パティスリーショップの少女。

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「怪盗パルフェ、という人物をご存知ですかな」 真夏の風景のなかに、透明な赤い光の余韻が残っていた。 「なんですか、それは」 「いえね、これは非公開の情報なのですけれどね。カラメルさんで防犯装置が鳴って警備会社の方が駆けつけた時、その時にはもうすでに『レモンシロップの宝石』は持ち去られていたのですが―――代わりに、その場所に手紙があったそうなんですよ」 「手紙?」 「そう、手紙です。差出人の名前は怪盗パルフェ。内容は、レモンシロップの宝石は私がいただいた云々。つまりは、犯行声明という訳ですな」 傾きかけた午後の日差しが窓から差し込んで、床に日溜まりを作った。 手のひらにかいた汗を、ポケットからハンカチを取り出してぬぐった。ほんとうに、今日はずいぶん暑い。店内でさえこのくらいの暑さなのだから、外はこの時間さらに気温を上げていることだろう。 「さあ……存じ上げませんね、残念ながら」 「そうですか。いや、仕方のないことです。変なことをお尋ねしましたね」 和三盆刑事は改めて店内を見渡した。 先ほどから動く気配のない自動ドア、焼き菓子を乗せた小さなテーブル、奥にはクッキーを詰め合わせたギフトボックスを何種類か置いている。 ラッピングや会計を待つ間休んでもらえるように置かれた、 背もたれのない小さな木のベンチ。白い壁にかけられた、お菓子の写真を使ったカレンダーと、繊細な作りの、古いオルゴール時計。 そして、ケーキやほかの洋菓子が並ぶ、ガラスのショーケース。 季節の果物たちをふんだんに使った洋菓子たちが、みんなとびきりきれいな顔をして、ショーケースに整列している。 暑い季節の果物は、目を覚ますようにカラフルだ。ガラスの箱の中に閉じ込められたそれは、まるで瑞々しい宝石のように見える。 「これは」 年齢を重ねた穏やかな声が、ショウケースの中にかけられる。 「何でしょうか」 思わず心臓がはねた。 「ここにある、この……ケーキ。の、隣の、陶器のカップに入ったもの、これはなんですかな」
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