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6限目の終わりを告げるチャイムが鳴った瞬間に、席を立ち教室を飛びだした。
工藤拓海はラグビー部に所属している。主将である。三年最後となる県大会が近づいているのだ。
練習メニューは、本番を想定したゲーム形式がメインになっている。
いつもなら基礎練をやった後に、15分のゲームを3セットで終わるのだが、5セット目に突入している。
監督の機嫌が悪い。
練習が始まった時の小雨は本降りに変わった。雨でも試合をするラグビーだ。監督の気持ちが晴れにならないと終わらない。ナイターが点灯している。
5セット目が終わり、主将の拓海が監督に呼ばれた。傘をささずにベンチに座っている。静かにひと言。
「死ぬ気でやれ」。
創部15年の歴史で全国高校大会へ五回もの出場実績をもつ。監督自身も高校時代に全国大会が開催される花園ラグビー場のグランドに立っている。
普段から口数が少なく激昂することはない。だからこそ監督の言葉には凄みがあり恐怖を覚える。拓海はメンバーを集め気合をいれた。
「おまえら、このままじゃ終わらねえぞ、死ぬ気でやるぞ」。
「お?っす」
部員たちの野太い声が雨夜に響き渡った。
6セット目が始まる。パスがバックスに回り、3次攻撃目でサイドラインを副将の池上颯太が疾走する。
降りしきる雨に目をほそめ、拓海は正面に回りこみ基本通り敵の腰から下を見て顔をあげたままタックルにいく。骨と骨が激しくぶつかる音がした。両腕で颯太の両膝をロックし全力で足をかく。颯太のからだが宙に浮き上がる。背中を伸ばし体重を前へとかけると颯太は仰向けに倒れ後頭部を激しくうった。
泥水が飛び跳ね目と鼻に入る。
ホイッスルが鳴った。
目を拭いベンチに座る監督を見ると、手をクロスさせ練習終了のジェスチャーをしていた。やっと終わった。
拓海はヘッドキャップを外してその場に座りこんだ。横になったままの颯太は、頭の後ろに手をあて言った。
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